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高森明勅
2019.6.8 06:00皇室

皇室の「男系」の血筋を引く国民

国民の中には、皇室の「男系」の血筋を引く人々が、実は一杯いる。

平清盛の子孫も、源頼朝の子孫も、足利尊氏の子孫も、
皆さん、皇室の血筋に繋がる。

改めて言う迄もなく、清盛は桓武天皇、頼朝は清和天皇、尊氏も
同天皇の血筋を、
それぞれ引くからだ。

例えば『古事記』を覗く。

すると、201の氏族が登場する中、実に175の氏族は皇室の血筋を引くとされている。
あるいは、平安時代の初期にまとめられた『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』
収録される1182の氏族中、皇室の血筋と公認された氏族(皇別)が335にも及ぶ。

更に、太田亮著『新編姓氏(せいし)家系辞書』を元に『歴史と旅』編集部が
作成した
「天皇家から出た氏族一覧」には、小さな活字で12ページにわたって、
おびただしい氏族名が
ビッシリ掲げられている(同誌平成7年、臨時増刊号72)。

勿論、それらには皇室との血筋の繋がりを偽ったケースも少なくないだろう。

だが、皇室の血統がかなり広範に、国民の間に行き渡っている事実は疑いない。
その事から、わが国の在り方を「皇胤(こういん=天皇の血統)国家」と呼んだりする。
従って、ただ皇室の「男系」の血筋を受け継ぐからという理由で
(結婚という厳粛な事実を介さないで)、
国民が皇族の身分を新しく取得できるようになると、
(“聖域”であるべき)皇室と国民の区別は殆(ほとん)どつけられなくなる。

この点については、かねて里見岸雄博士が以下のように指摘されていた。

「(帝国憲法第1条に言う)『万世一系(ばんせいいっけい)』は
一定の名分(めいぶん=身分・立場などに応じて守るべき道義上の
分限〔ぶんげん〕)
によって限界づけられてゐなければならぬ。
単に、生物学的事実による万世一系をいふならば、皇胤国家たる
日本の如(ごと)きは、
万世一系の出自たる者は殆ど無数である。

『万世一系』の万世一系たる所以(ゆえん)は、
故にこの単なる生物学的事実の一般的概念
に存せず、
特に皇族たる身分範囲内に於て体承(たいしょう)せられある
『万世一系』の意味である
事は言ふ迄もない。

…即(すなわ)ち、皇室典範の定むる皇族範囲内に限定せられ、
(明治)典範第1増補第6条の規定
(「皇族ノ臣籍ニ入リタル者ハ皇族ニ
復スルコトヲ得ズ」)を確守せる範囲内に於(おい)てのみ
この大義名分は成立する」

「『祖宗(そそう)ノ皇統』とは、単に家系的血統を意味するだけでなく、
『皇族範囲内にある』といふ名分上の意味を包含してゐるのである。然(しか)
らざれば、我が国の如き皇胤国家に於ては、君臣(くんしん)の分(ぶん)を
定めることが不可能に陥るであらう」(『天皇法の研究』)と。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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